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  ニュース     2020/04/02 18:59

コロナで需要急増の人工呼吸器、中国勢に反転攻勢チャンス 無料記事

 中国の人工呼吸器メーカーに巻き返しの好機が到来している。新型コロナウイルスの世界的流行という異常事態は、欧米勢に席巻されてきた人工呼吸器業界の構図を一変させる可能性が出てきた。コロナ感染者が急増している欧米を中心に、海外で実需が急膨張しているため。中国製人工呼吸器を買い求める動きがにわかに活発化している。21世紀経済報道が2日付で伝えた。
 爆発的な需要急増を背景に、各国は人工呼吸器の輸入要件を緩和している。中国の輸出支援政策も追い風となって、中国の人工呼吸器メーカーは起死回生の好機を得た格好だ。 国務院が先ごろ開催した記者会見で産業政策・法規司の許科敏・司長は、気管挿管による侵襲的人工呼吸器を生産する国内企業は21社を数え、うち8社が欧州連合(EU)基準のCEマークを取得していると紹介。侵襲的人工呼吸器の国内生産能力は週間2000台と、世界の5分の1を占める規模にある実態を報告した。足元海外受注は2万台までに積み上がり、さらに連日にわたり海外から大口買付の意向が寄せられている状況。概算統計によれば、侵襲的人工呼吸器だけでも、3月19日以降のわずか10日間で、年初来国内供給量の半分に相当する約1700台を海外に緊急提供したという。
 企業信用調査サービスの「天眼査」によれば、マスクによる非侵襲的人工呼吸器を含む中国の人工呼吸器メーカーは足元で992社。うち半数が広東省を本拠地としている。国内メーカーの90社が海外との取引があるという。新規参入も加速し、国内人工呼吸器メーカー数は、コロナ禍の今年2月1日から3月30日だけで10社も増加。新設数は2019年同期比で倍増した。
 ただ、中国製人工呼吸器の生産能力は限定されている。多くの企業が重要部品を海外に依存しているためだ。コンプレッサーやセンサー、半導体チップなど重要部品は、スイス・ミクロネル、米ハネウェル、日本SMC(6273/東証)などから調達している。さらにコロナ治療の「切り札」とされるECMO(体外式膜型人工肺)に関しては、その重要部品原料となるポリメチルペンテン(PMP)を提供可能な企業が米3M傘下のMembranaに限られている状況だ。
 人工呼吸器はこれまで、欧米大手が主導権を握るマイナー市場に過ぎなかった。マーケッツアンドマーケッツの試算によれば、19年の世界市場規模は9億3000万米ドル(約1000億円)にとどまっている。企業分布はEUで約半数を占め、なかでもスイスのハミルトンメディカルは世界シェア4分の1を掌握する世界大手だ。その他主要産地は米国、中国となっている。また技術ハードルが高いECMOは、独MAQUET、アイルランドのメドトロニック、リヴァノヴァの3社が市場を独占。3社の15年世界シェアは合算で65〜70%に達した。中国では、天津匯康医用設備有限公司のみが生産技術を擁している。
 中国の人工呼吸器市場も世界大手が席巻。中信証券のリポートによれば、17年シェアは独ドレーゲルが35.8%、メドトロニックが19.2%、独MAQUETが15.8%。中国勢は、邁瑞医療(MINDRAY:300760/SZ)が1.5%、河北誼安奥美医療設備(002950/SZ)が1.4%に甘んじている。


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