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  ニュース     2022/03/07 18:00

中国:全人代で22年GDP成長「5.5%前後」、安定を最優先 無料記事

 【亜州ビジネス編集部】中国北京市の人民大会堂で5日、第13期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第5回会議が開幕した。11日まで開催される。李克強・首相は冒頭の「政府活動報告」で、2022年の国内総生産(GDP)成長率目標を「5.5%前後」とする方針を表明。21年の「6%以上」から引き下げ、1991年以降で最も低い目標値に設定した。ただ、目標値は市場の事前予想とほぼ一致している。

 李首相は今年の成長目標について、「雇用安定、民生保障、リスク防止の必要性を考慮した」と説明。比較対象となる前年の実績が高い状況の下(21年GDP成長率は8.1%)、中高程度の成長を達成するには「努力が必要」と述べた。また、中国経済は「需要の縮小、供給へのインパクト(サプライチェーン停滞)、経済見通しの悪化」という三重苦に直面していると指摘。新たな下押し圧力を受ける中、「安定成長」をより優先する必要があるとした。

 22年の財政政策については、対GDPの財政赤字比率を「2.8%前後」とする方針が示された。前年目標の「3.2%以上」から引き下げ、新型コロナウイルス禍前の水準に戻している。金融政策については、緩和的な政策を継続する方針を示した。

 政府活動報告で示された22年の政策主旨は次の通り。

【数値目標】消費者物価指数(CPI)の抑制目標は3%前後(前年目標と同水準)とする。雇用面では、都市部の新規就業者数を1100万人以上(同)、都市部の調査失業率は5.5%以内(前年目標は5.5%前後)を目指す。輸出入は安定と質向上を目指し、国際収支の基本的にバランスの取れた状態を目指す。食糧(穀物、豆類、イモ類)生産量は1兆3000億斤(=6500億キロ)以上を確保する。

【財政政策】積極的な財政政策をより効果的、正確なものとし、より持続可能なものとする。対GDPの財政赤字比率は2.8%前後とする方針で、昨年予算から引き下げる。

【金融政策】穏健な金融政策をより機動的で適度に行う。新規融資の規模を拡大し、マネーサプライ、社会融資総額の伸びを名目経済成長率に見合ったペースに維持させる。人民元相場を合理的でバランスのとれた水準で基本的に安定させる。

【雇用政策】1000億人民元以上の失業保険基金を雇用安定化や職業訓練に利用する。

【減税政策】引き続き減税・税金還付を実施する。年間で2兆5000億人民元規模の税負担軽減を目指す。

【内需の拡大】新エネルギー自動車の消費を引き続き支援し、グリーン家電、スマート家電の農村普及支援(下郷)、買い替え支援(以旧換新)を地方政府が実施することを奨励する。社区における養老、託児設備の建設を支援するほか、家政サービス業界の質向上、規模拡大を促す。

【投資の拡大】地方政府の「専項債(公益事業向け資金調達を行う特別地方債)」発行枠は3兆6500億人民元とする(前年予算は3兆7500億人民元)。中央予算内では6400億人民元を投資(前年予算は6100億人民元)。「重点水利プロジェクト、総合立体交通網、重要エネルギー基地・施設の建設」、「都市ガス管網の更新・改造」、「洪水防止、排水施設の改善」、「地下総合パイプ網の建設」などを重点とする。

【デジタル経済】デジタル・情報インフラの建設、第5世代(5G)移動通信の規模化・応用、スマートシティ・デジタル農村の発展を図る。集積回路(IC)、人工知能(AI)などの産業を育成する。ハイテク型中小企業の研究開発費控除について、75→100%に引き上げる。

【対外開放・外資利用】外資による投資範囲を拡大し、ハイエンド製造、研究開発、現代サービスなどの分野、および中西部、東北部に対する外資の投資を支援する。自由貿易試験区、海南自由貿易港の建設を推進する。

【環境保護】カーボンピーク、カーボンニュートラルの目標達成に向け、石炭のクリーンで高効率な利用を強化する。大型の風力発電、太陽光発電基地の建設を推進する。

【不動産政策】「住宅は住むためのもので、投機の対象ではない」との基本方針を堅持する。長期賃貸市場の発展加速に向け、「保障性住宅」の建設を推進する。


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