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  ニュース     2020/02/26 19:22

中国車企業が相次ぎ海外展開、インドやアセアンを積極攻略 無料記事

 新型コロナウイルス大流行の異常事態は、国内新車販売の低迷に直面する中国自動車関連企業の海外開拓を一段と加速させる原動力となろう。「感染拡大は中国の自動車生産・販売システムを混乱に陥れるだけでなく、海外進出にもネガティブインパクトとなるものの、そのネガティブ影響は限定される」との見方が多数派だ。事実、中国車企業のグローバル化戦略は停滞していない。1月から2月前半にかけた1カ月半だけでも、長城汽車(2333/HK)、上海汽車集団(600104/SH)、奇瑞汽車(Chery Automobile)の3社が相次いで海外事業増強に動いている。中国汽車工業信息網が25日付で伝えた。
 長城汽車はわずか1カ月間で、米ゼネラルモーターズ(GM)のインド、タイ工場を買収する契約を矢継ぎ早に締結。いずれも年内の買収完了を計画している。19年6月に稼働したトゥーラ工場(ロシアのモスクワ南方)を加え、長城汽車は海外3カ所に完成車工場を擁する体制を整える構えだ。
 長城汽車の1月新車販売は速報ベースで、前年同月比28.16%減の8万300台に低迷。傘下全ブランドの販売が大きく落ち込んだ。ただ、海外販売に限れば好調を維持している。1月の輸出台数は前年同期比18.36%増の4442台に拡大した。不振の中国国内販売と対照的な結果となっている。
 上海汽車はインド販売に注力中だ。2月6〜9日にかけてニューデリーで開催された「AUTO EXPO 2020 」に出展。現地で好調な売り上げみせている電気SUV「MG EZS(名爵 EZS)」やコネクテッド車「MG Hector」を展示したほか、「5Gパネルスマートコックピット」搭載の「Roewe Vision-i(栄威 Vision-i)」コンセプトモデルや、スマート電気SUV「栄威 MarvelX」など、電動化やスマートコネクティビティ領域の最新技術開発成果も披露している。
 上海汽車のインド販売は、19年末の累計で1万6500台に到達。同社にとってインドは、タイ、英国、インドネシア、チリ、オセアニア、中東に続き、現地販売1万台突破の7カ所目市場に成長した。自社の海外3カ所生産拠点となる完成車工場は、2019年4月にインドで稼働している。年間8万台の生産能力で、現地販売目標の達成を下支える戦略だ。
 中国自動車メーカーの19年海外販売で、上海汽車は全体の33%を掌握した。この好調は今年に入っても継続。傘下の上汽通用五菱汽車(SAIC-GM-Wuling Automobile)は、インドネシア現地法人の1月販売が前年同月比41.5%増の774台に急拡大した。
 一方、奇瑞汽車は米国市場進出を狙う。米自動車ディーラー「HAAH Automotive Holdings」との提携を2月に発表した。北米向けに定めた新たな自社ブランド「VANTAS」を現地展開する計画を披露している。奇瑞のプレミアムブランド「EXEED(星途)」のプラットフォームをベースに開発。21年末から22年初旬にかけてSUV2種を発売する計画だ。
 奇瑞の1月販売は5万3100台。春節休暇に伴う営業日減少や、新型コロナウイルス感染の影響を受けるなかで、前年同月との比較で14%落ち込んだ。ただ1月の輸出実績は前月比1.2%増の8957台に上るなど、好調なスタートを切っている。
 中国車企業による近年の海外展開を巡っては、3つのトレンドが顕著だ。単純な輸出から現地に開発・生産・販売体系を構築する戦略に変化しているほか、投入製品の電動化・スマート化が加速。開拓先は欧米の先進国まで延伸している。
 もっとも、欧米市場進出の難易度は高い。米中間の貿易・技術摩擦に翻弄されるなか、広州汽車集団(2238/HK)は19年の米進出計画を棚上げした。足元のグローバル貿易環境下では、インドやタイといったアセアン市場進出が中国企業により大きな果実をもたらすと分析されている状況だ。


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