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  ニュース     2020/05/21 18:59

中国車載電池「三元系」シェア7割に伸長、次世代素材めぐり競争白熱 無料記事

 次世代車載電池を巡る技術開発競争が熱を帯びている。中国の車載リチウムイオン電池マーケットでは、正極材にニッケル、マンガン、コバルトの三元素を使用する三元系(NCM)陣営の勢力図が拡大中だ。研究機関EVTankの最新統計によると、中国の車載電池出荷量(車両搭載ベース)は今年1〜4月に三元系シェアが72.87%にまで躍進。リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池は22.93%までシェアを落とした。2017年時点ではリン酸鉄系が49.61%、三元系が44.69%で推移するなど、リン酸鉄系陣営が優位に立っていたものの翌18年にこの勢力図は逆転。以降、その差は年を追って開いている。第一財経などが20日付で伝えた。
 量的メリットと技術進歩を背景に、三元系電池の価格は急速に低下。リン酸鉄系のコストメリットは薄れつつある。こうしたなか、電池各社が採る事業戦略の内容に注目が集まる情勢だ。
 三元系優位の情勢は、リン酸鉄系を主力としてきた比亜迪(BYD:1211/HK)の圧力を増大させている。形勢逆転に向けてBYDは先ごろ、次世代のリン酸鉄電池「刀片電池」を市場投入した。エネルギー密度を従来比で50%高める半面、コストを30%低減させている。BYDは13日、この新型電池を初搭載した新型ミッドサイズセダン「漢EV (Han EV)」を欧州で先行発売。航続距離は600キロに達した。中国でも6月末に販売を開始する。
 一方、三元系とリン酸鉄系の両輪戦略を採ってきた企業は、寧徳時代新能源科技(CATL:300750/SZ)だ。CATLは今年下半期に米テスラ(TSLA/NASDAQ)の上海工場に向けて電池供給を開始する予定となっている。供給電池について明言を避けながらも、「市場需要を踏まえて決定する」と説明。「三元系、またはリン酸鉄系のどちらかが一方に絞ることない」との方針を示した。自社のリン酸鉄系製品に関して、省スペースと低価格の実現を目指して開発した「CelltoPack」の技術を三元系電池に応用することも検討しているという。
 次世代素材の開発競争も熱を帯びてきた。CATLのほか、長城汽車(2333/HK)から独立した車載電池メーカーの蜂巣能源科技有限公司(SVOLT Energy Technology)は、正極材にコバルトを使わない、またはコバルト比率を極限にまで低めた「コバルトフリー電池」の開発に注力している。
 近年は、グラフェンを正極の導電助剤に用いるリチウムイオン電池製造技術も期待されている状況だ。広州汽車は6年の歳月をかけて、3次元構造グラフェン(3DG)素材の開発に成功。同素材をベースとした「超急速充電バッテリー」をこのほど発表した。わずか8分で85%充電を実現。充電時間をガソリン車の給油時間並みに短縮させている。


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