【亜州ビジネス編集部】香港公務員事務局は1日、公務員試験の受験資格を見直し、大学学部生と大学院生が卒業年度の前年に試験に参加できる新制度を導入すると発表した。新制度が適用されるのは、政務主任（AO）、行政主任（EO）などの一部職種。今年末に実施する試験から導入する計画だ。現地メディアの明報が2日伝えた。

　事務局の説明によると、例えば4年生大学の場合、3年生に進級すれば受験資格を得る形となる。試験の合格者は、指定された期間内に学位を取得するなどの条件を満たせば、卒業時に条件付きで採用が決まる形だ。

　事務局局長は1日の記者会見で、新制度の導入について、政府に貢献したいと考える若者ができるだけ早くキャリアプランを立てることを支援し、そうした若者のチャンスを増やすことが狙いだと説明。公務員不足を埋めることを意図したものではないと強調した。また、専門職など新制度の対象外となっている職種については、マンパワーの需要、新制度の運用状況などを考慮し、今後の適用を検討していく方針としている。

　大学側も新制度を歓迎するスタンスだ。うち香港大学は、学生が早期に公務員試験に向けて準備することを支援し、3年生にも関連する指導を行っていく方針を表明。香港理工大学も政府方針に積極的に協力していく考えとしている。

　一方で、人材コンサルタントの関係者は、政府が大企業と同様に「青田買い」を行うことで、人材市場における中小企業の競争力がさらに低下することが懸念されるとの見方。新型コロナウイルス禍で景気が悪化するなか、多くの求職者がより安定した仕事を求めており、この点で政府は人材市場においてかなり有利だと指摘している。

　香港では足元で公務員の辞職が急増。2021/22年度（21年4月〜22年3月）の辞職数は3734人に達し、前年度の1863人から倍増した。辞職率は2.1％に達し、中国返還後で最高を記録している。公務員の職員団体は辞職増加の背景について、◆民間企業に比べた給与待遇の低さ、◆職務上のプレッシャー増大、◆政治的要因――などを指摘。また、人材コンサルタントの関係者は、一部の民間企業では公務員よりも離職率が高くなっている点に言及。移民の増加が人材不足につながっていると指摘した。


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