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  ニュース     2025/08/05 11:33

中国:広東広州の「ヒトスジシマカ工場」、毎週500万匹を放飼 無料記事

【亜州ビジネス編集部】蚊が媒介する急性ウイルス感染症「チクングニア熱」が流行するなか、広州市の「ヒトスジシマカ(アジアンタイガーモスキート)工場」が生殖能力のない蚊の量産、散布を開始した。広州市黄埔区の目立たないオフィスビル内に位置し、フル稼働を通じて毎週500万匹を放つ。繁殖源除去や殺虫剤散布が主な防除法だが、蚊で蚊を退治する「以蚊制蚊」の理論を導入した。生物技術で繁殖連鎖を断ち切る狙いがある。広州日報が4日付で伝えた。

 広州威佰昆生物科技有限公司(Wolbaki)の生産基地では、恒温恒湿ルームで数百万個の蚊卵が栄養液に浮かび、ロボットアームが蛹(さなぎ)を正確に仕分け、分離機が雄蛹だけを選別する。その誤差率は0.5%未満で、羽化後の雄蚊の混入誤差は0.3%未満だ。

 吸血する雌蚊が病原体を媒介するのに対し、雄蚊は人を刺さない。そこで威佰昆は共生細菌のボルバキアを利用し、去勢雄蚊を生産する。ボルバキアを保菌する雄蚊と野生雌蚊が交尾すると胞質不和合で卵は孵化しない。雌蚊は一生一度しか交尾しないため、数世代放飼すれば蚊群の密度は急減するとみられる。

 その中核技術は、卵への菌注入だ。一滴に百個以上ある蚊卵を顕微鏡で200倍に拡大し、専用のマイクロニードル(極小針)で1個ずつ注射する。成功率は1割未満という難作業で、国内で量産している企業は威佰昆だけだ。化学的殺虫と異なり環境に優しく、標的はヒトスジシマカだけで他の昆虫を傷つけない。また遺伝子組み換え技術も用いない。

 威佰昆は2015年から各地で放飼試験し、広州南沙区の島では野生蚊が9割減、白雲区峡石村では密度90%以上の常時抑制に成功、デング熱ゼロの環境を7年維持している。放飼比率は「野生雌1:去勢雄5以上」。3週間で半減、6~8週間で80%減が可能だ。1平方メートル当たりの駆除コストも年平均2~3人民元(約41~62円)まで低減される。地方自治体と連携し、今後も普及を図る計画だ。


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