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  ニュース     2019/08/26 19:59

中国:「FCV」故障頻発、補助金目当て企業参入で業界混乱 無料記事

 「新エネルギー車」と位置付けて中国が普及を目指す燃料電池車(FCV)を巡り、走行中に突然動かくなるなど不具合の報告が各地で頻発している。しかも、これらの致命的トラブルは中国産車に集中した。この背景には、技術を持たない“補助金依存型企業”の乱立がある。コア技術や自主革新力の欠如、産業化の遅れといった一連の問題は、車両の信頼性や耐久性が担保されていない現状を招いたという。第一財経が23日付で伝えた。
 中国標準化研究院と全国水素エネルギー標準化技術委員会がまとめた「中国水素エネルギー産業基礎施設発展白書(2016年)」では、中国のFCV保有数を2020年に1万台、30年に200万台と、全国自動車生産台数の5%を占める規模にまで拡大させる目標が掲げられた。世界最大のFCV市場を形成し、関連産業の生産額を1兆人民元(約15兆円)にまで膨張させる方針だ。このビジネス好機に乗り遅れないようにと、複数企業がFCV領域に競って参入している。
 国家能源集団や国家電投集団、中国石油天然気、中国石油化工など国有エネルギー大手だけでなく、五竜集団(729/HK)、深セン市雄韜電源科技(002733/SZ)、浙江尤夫高新繊維(002427/SZ)、超威動力HD(951/HK)、無錫先導智能装備(300450/SZ)、浙江凱恩特種材料(002012/SZ)、深セン新宙邦科技(300037/SZ)、珠海銀隆新能源(Yinlong New Energy)などリチウムインイオン動力電池関連メーカーも業態転換を所望。水素燃料電池を主力業務の一つに育てる構えにある。水素エネ産業を専門に研究している香橙会研究院によると、水素エネサプライチェーンに含まれる上場企業数は、足元で139社にも膨れ上がった。多くの企業が先を争うようにFCVシステムの開発、車両組み立てに進出している。
 ただ、専門家によれば、一部の企業は、補助金依存・目当ての事業展開を推進しているのみ。ガソリン車を改造しただけの車両を「FCV」として対外発表する事例も散見された。
 事実、補助金制度は企業参入を過剰に後押ししている。17年の広州モーターショーである企業が披露した燃料電池を動力とする多目的車は、メーカー希望小売価格130万人民元(約1910万円)に設定。うち国家補助金と地方補助金の各50万人民元を差し引いた消費者の実質負担はわずか30万人民元と、補助率は77%に達した。NEV向け補助金について政府は17年から給付額を段階的に引き下げているものの、FCVに限っては金額を据え置いたためだ。
 地方政府の誘致合戦もこれに拍車をかけた。水素エネルギー車産業が19年の政府活動報告に組み入れられたことをきっかけに、中国の各地方政府は水素エネ産業の支援策を続々と発表。「地元経済振興の要」と目し、20を超える省・直轄市が産業発展計画を策定した。
 こうした政策背景の下で形成されてきた中国のFCV産業では、車両の性能、効率、寿命の各面でいずれも技術が未熟。車両コストの50%を占める電池動力システムは、米国やカナダ、日本などの新技術に深く依存したままだ。中核技術の産業化は実現していない。17年に東風汽車や福田汽車など中国車メーカー8社が生産した合計1272台の燃料電池商用車は、触媒の大部分、膜電極のほぼすべてが海外調達だ。
 ある業界専門家は、「中国のFCV工場は厳密にいえば組立工場に過ぎず、重要技術を掌握している実力派企業はほぼ存在しない。多くのケースが臨時に調達した部品を使って組み立てた即興車に過ぎない」と指摘した。


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