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  ニュース     2020/02/21 18:59

中国:EV電池“脱コバルト”潮流か、国軒高科に商機も 無料記事

コバルト元素を使わない「コバルトフリーリチウムイオン動力電池」採用に向けて、米テスラ(TSLA/NASDAQ)が車載電池中国最大手の寧徳時代新能源科技(CATL:300750/SZ)と商談中――と伝えられたニュースが内外の耳目を集めている。業界関係者によれば、いわゆる「コバルトフリー」は、コバルト比率を10%以下にまで低下させた三元系(NWC)技術の進化系か、または正極材料にリン酸鉄リチウムを使う「リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFe電池)」を指すとみられる。車載電池で中国2、3番手に位置する比亜迪(BYD:1211/HK)と合肥国軒高科動力能源(国軒高科:002074/SZ)は、リン酸鉄系電池が主流だった当初、首位CATLとのシェア格差はさほど大きくなかった。「コバルトフリー電池」時代の到来が車載電池業界の勢力図変化を促すとの見方もある。毎日経済新聞が19日付で伝えた。
 報道によれば、テスラは上海工場で生産する「Model 3」にコバルトフリー電池を搭載する構想。テスラは自主開発の新型リチウムイオン電池について、4月の投資家向け会議で具体情報を報告する予定という。一方、テスラとの電池サプライヤー提携についてCATLは19日、「意向レベルの協議段階にとどまり、詳細は未定」とコメントした。
 仮にテスラにけん引される形でリン酸鉄系回帰の流れが起きれば、リン酸鉄電池の生産比率が高い国軒高科にとって“福音”となろう。CATLの2019年車載電池出荷量は車両搭載容量ベースで、三元系が2万1619MWh(2161万9000kWh)、リン酸鉄が1万1247MWh。それぞれ国内シェア55.6%、56.0%を掌握した。2番手のBYDは三元系が7982MWh(シェア20.5%)、リン酸鉄が2781MWh(13.8%)。かつてバス向けリン酸鉄電池でTOPシェアにまで登り詰めたものの、足元では三元系に軸足を移した。一方、3番手の国軒高科はリン酸鉄系が主力部門。19年出荷量は三元系の190MWh(シェア0.5%)に対し、リン酸鉄は3218MWh(15.1%)の規模を確保している。
 リン酸鉄電池に関して国軒高科は、電池パック技術の改良と並行して、原材料の性能向上を通じた電池セルのエネルギー密度引き上げに注力中だ。量産タイプのエネルギー密度をすでにセル単体で190Wh/kg超、電池パックで140Wh/kg超にまで高めた。今後さらに技術を磨き、それぞれ200Wh/kg、160Wh/kgの到達も視野に入るという。
 一方で大手2社も技術開発に余念がない。リン酸鉄電池に関して、CATLは「CTP(Cell-to-Pack)」技術を業界に先駆けて採用。電池パック体積利用率を15〜20%高めることに成功した。
 BYDは、自社開発した次世代リン酸鉄電池を3月に量産開始すると宣言している。この新型電池は、電池セルの形状を扁平型にすることで、従来電池と比較して体積エネルギー密度を50%も向上させた。しかも完成車寿命を走行ベースで100万kmまでに延ばせるという。BYDは20年までにリン酸鉄電池のエネルギー密度をセル単体で180Wh/kg超、電池パック全体で160Wh/kg超にまで引き上げる計画を掲げている。
 中国の車載電池市場は当初、EVバス向けのリン酸鉄電池が先行して発展を遂げたが、市場飽和につれて16年ごろから乗用車向け電池の需要が拡大した。エネルギー密度が高い電池ほどEV補助金が上乗せされた政策環境もあって、乗用車向けは三元系電池が主流となっていった経緯がある。
 光大証券のリポートによれば、車両搭載容量でみた車載電池出荷シェアは2016〜19年にかけて、リン酸鉄系が72→32%に低下する一方、三元系は23→62%に拡大。CATLは三元系電池関連の生産能力と技術蓄積を強みに、車載電池の世界最大手にまで一気に躍進した。


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