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  ニュース     2019/12/16 18:59

中国:「FCV元年」の中国で商用化競争、内外企業の動き本格化 無料記事

 水素燃料電池(FCV)の商用化競争が中国で熱を帯びている。年初の政府活動報告で中央政府のFCV優遇スタンスが明示されるなか、2019年は中国の“FCV元年”と目された。各地方政府がFCVインフラ整備に相次ぎ着手したことも追い風に、外資、中国自主ブランドを問わず、各メーカーが続々と自社のFCV戦略を本格始動させている。南方日報が13日付で伝えた。

 韓国の現代自動車(Hyundai Motor:005380/KS)はこのほど、広東省広州市に燃料電池やFCVに関する最先端技術を紹介する展示館を開設。一般消費者向けに公開した。中国のFCV事業に関して、現代自は21年下半期に中・小型トラックを現地投入する計画。パワー不足や航続距離不足がボトルネックとなっている電気トラック(EVトラック)の代替を狙う。現地生産も計画中。初期投入車は容量95キロワット(kW)の燃料電池ユニット2基を搭載し、けん引重量34トン、航続距離300〜400kmを想定している。25年には大型牽引車もFGVラインアップに加え、中国の需要に順次対応していく戦略だ。

 トヨタ自動車(7203/東証)も今年、FCVを巡って中国での動きを活発化している。7月、北汽福田汽車、中国第一汽車、金竜聯合汽車向けにFCV部品をそれぞれ供給すると発表した。また9月には中国現地パートナーである広州汽車集団と第一汽車集団との間で、FCV現地生産化に関する提携協定に相次ぎ署名している。

 一方、中国自主ブランド勢もFCV事業を本格化した。上海汽車集団系の商用車メーカーである上汽大通汽車(SAIC MAXUS)はFCV小型トラック「MAXUS FCV80」について、仏山、上海、撫順、無錫などですでに商用化スタート。「MAXUS FCV80」の実走行距離は地球37.5周分の累計150万kmに達した。20年には第2世代の自主開発燃料電池ユニットに関してピーク時出力を115kWに引き上げ、まずミドルクラスSUVに搭載する予定だ。水素充填時間はわずか3分で、最大航続距離は650km超を実現。ガソリン車と遜色ないまでにパフォーマンスを高められる見込みという。

 一方、長城汽車(2333/HK)は20年にFCVのコンセプトモデルを披露し、22年の北京冬季五輪で小ロット生産のFCVを試験投入、23年に量産モデルのFCV乗用車を発売する――との計画を打ち出した。傘下バッテリーメーカーの蜂巣能源科技を通じて19年4月、水素エネ・燃料電池の開発・実用化に従事する子会社「未勢能源科技有限公司」を設立している。

 また広州汽車は、FCVパワートレイン開発を手がける北京億華通科技(834613/新三板)と提携。今年8月に2社共同開発のFCV・SUVをお披露目した。

 億華通が開発した燃料電池は、技術面で100%の国産化を達成したという。出力密度を500W/kgに引き上げる一方、製造コストを30%抑えた。軽量化に加えて、標高の高い寒冷地向け適応能力も向上。バス、物流車などに幅広く応用できると期待した。

 今年3月の政府活動報告では、「水素ステーション設備の建設を推進する」との文言が初めて盛り込まれ、FCV普及を急ぐ政府スタンスが明確化された。地方政府もこれに呼応。12月時点で国内22都市が独自のFCV優遇政策を公布している。

 中国政府が16年に発表した「中国水素エネルギー産業インフラ発展白書」では、20年にFCV普及規模を1万台、水素ステーションを100カ所まで増やし、30年にはそれぞれ200万台規模、1000カ所以上に拡大、整備して産業規模を1兆人民元に到達するという目標が掲げられた。

 工業和信息化部(工業情報化部)が発表した最新の「道路機動車生産企業・製品公リスト」に収載され、かつ新エネルギー車(NEV)補助金の給付要件を満たしたFCVは、足元で13型式を数える。中国汽車工業協会のまとめによれば、今年1〜11月の中国FCV生産台数は、前年同期比398.6%増の1426台。販売台数は375.8%増の1337台に拡大した。足元で上汽大通、中通汽車、仏山飛馳など商用車メーカーが先行している。


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