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  ニュース     2020/07/09 18:59

印が中国企業締め付け強化、電源装置に事実上の禁輸措置 無料記事

 国境係争地域での両国軍による衝突を背景に、インド政府は中国への経済的締め付けを強化している。59種に上る中国製アプリの国内使用禁止令に続き、3日には電源装置とその部品に関して、国内企業の対中輸入を許可制にすると発表した。インドのシン電力相は、「中国とパキスタンからのいかなる電力設備輸入も認めない」と発言。事実上の禁輸措置導入を宣言している。21世紀経済報道が9日付で伝えた。
 長期にわたって発電・送電設備を中国製品に頼ってきただけに、新ルールはインドの電力価格上昇につながる恐れがある。電力分野の輸入額は、インドの18/19年財政年度全体で総額7100億ルピー(約1兆200億円)に拡大した。うち29.6%相当の2100億ルピーを中国から輸入している。
 インドの対中強硬措置に対して中国商務部の高峰・報道官は、「自国側はインドの製品・サービスに対していかなる制限や差別的措置を設けない。各分野でインドとの実務的な協力を重視しており、双方が互いに向き合うことを望む」とコメント。対話を推進していく姿勢を強調した。
 インドによる中国製発電設備禁輸措置について上海国際問題研究センター・南アジア中央アジア研究所の王徳華・所長は、「中国企業の対インド投資に大きな影響をもたらすものの、『北電南送』(北部の電力を南部に送る)国家プロジェクトや、モバイル分野の応用を含め、発電・送電装置に対する中国国内の需要は大きい。輸出移転先として『一帯一路』沿線貧困国への進出機会を探ることも可能だ」と指摘。対インド輸出が滞っても中国側のダメージは限定されるとの見方を強調した。
 ただ、インドを巡っては、さらに高い対中貿易障壁を設ける可能性も取り沙汰されている。中印間の取引を主力とするある物流会社は、インド政府による公式発表はないものの、現地の港湾や空港で中国からの速達貨物に対する通関審査の厳格化、さらには審査停止が行われているという実態を明らかにした。
 さらにこれ以前の報道によれば、インドは自国企業保護を目的に、中国などからの少なくとも製品370種に対し、より厳しい貿易障壁を設ける政策を計画中。中国製の家具やエアコン用コンプレッサー、自動車部品などに対する関税引き上げを検討しているとされる。
 もっとも、インド製造業の足元レベルを踏まえれば、対中依存度を引き下げて、自国製造業振興を図るモディ政権の思惑は一筋縄ではいかないとみる専門家は多い。中国商務部の国別統計によると、インドにとって中国は、最大の輸入相手国であり、第3位の輸出相手国でもある。インドの対中機電製品輸入額は19年に337億3000万米ドル(約3兆6200億円)に増大。同年の対中輸入額全体の49.5%を占めた。


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