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  ニュース     2019/10/10 19:04

中国:オイルシェール開発加速、吉林省で3000億円ファンド始動へ 無料記事

 非在来型石油の代表格である「オイルシェール」開発に中国が本腰を挙げる。2年近い準備期間を経て、同国最大規模のオイルシェール関連ファンドがこのほど吉林省長春市に立ち上げられた。まず第1弾として1億人民元(約15億円)を募集する。経済参考報が10日付で伝えた。
 ファンド名は「吉林省衆誠油頁岩産業投資基金」。吉林省衆誠油頁岩集団有限公司と鉄投投資基金管理(北京)有限公司が共同で発起し、総額200億人民元(約3000億円)で運用に乗り出す。国内の金融資本、産業資本を呼び込んだ上で、吉林省のオイルシェール資源開発・利用プロジェクトや、オイルシェール開発企業に投資する予定。官民を挙げて開発に取り組む中国オイルシェール産業のひな型を整える。
 オイルシェールは岩石内に閉じ込められた固体状の原油、岩石から抽出した油母は、精製後にガソリン、灯油、ディーゼル油などを得られるだけに“人造石油”とも称される。欧米先進国など複数国家が開発・商業化利用を模索している段階だ。
 中国は豊富なオイルシェール資源を擁する。吉林大学の06年調査によると、地下1000メートル程度の浅部に存在するオイルシェールは、中国全体で7199億トンと莫大。油母ベースで476億トン相当の規模となり、米国に次ぐ。さらに同大学による19年の調査を基にした最新データでは、中国のオイルシェール総埋蔵量はさらにその2倍に達すると試算された。
 なかでも黒竜江省と吉林省に広がる松遼盆地は、オイルシェールの集中エリア。過去10年あまりかけて中国で埋蔵確認されたオイルシェールは、同エリアで80%を占めた。すでに100億トン超の大型鉱床を4カ所発見。うち長春嶺鉱区は453億トン規模に達する。
 しかも在来型石油と比較して、オイルシェールは開発コストが安い。地下1000メートルの浅部にあるオイルシェールに限れば、地下1000〜5000メートルまで掘り下げる必要のある石油開発と比べて、コストを25%も軽減できるという。精製過程のコスト問題をクリアできれば、大規模商用化への道が開ける見込みだ。
 足元で中国のエネルギー対外依存度は、石油で70%超、天然ガスで45%にも達する。ある著名専門家は、「中国が石油換算で年間2億トンのエネルギー安全保障を確保していくためには、オイルシェールの開発・利用が現実的。最も信頼できる戦略備蓄資源の一つだ」と指摘。中国科学院の李廷棟・院士(アカデミー会員)も、「オイルシェール開発は中国の石油需要を満たす上で有益。石油輸入依存度の低減につながる」と期待した。



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