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  ニュース     2025/11/04 14:57 NEW!!

中国:「トリウム溶融塩原子炉」稼働実験、ウラン転換に成功 無料記事

【亜州ビジネス編集部】中国に位置する世界唯一の「実験用トリウム(Th)溶融塩原子炉」(熱出力2MW)で、トリウムを核燃料ウラン(U)に転換するサンプル抽出実験を終えた。甘粛省中部の武威市のゴビ砂漠に立地し、第4世代原子力技術の分野で中国が先頭に立ったことを意味する。一次冷却材の溶融塩中で増殖と核分裂サイクルを継続する仕組みだ。トリウムを溶融塩とともに原子炉内に投入し、中性子を吸収させて核燃料ウランを得る。中国科学院上海応用物理研究所(SINAP)の報告内容として、中国経済網が3日付で伝えた。

 中国のトリウム鉱は、多くがレアアース採掘の副産物として得られるだけに、原子力発電用核燃料の自給率引き上げにつなげる狙いがある。第4世代核分裂炉の中核的存在として、トリウム溶融塩炉は資源・安全・立地の面で従来型原発に対して優位性が高い。世界で現在運転中の原子炉の大多数は熱中性子炉で、熱中性子による核分裂反応に依存する。熱炉で主に消費される核燃料はU235だが、自然界のU235存在比はウラン全埋蔵量のわずか0.71%に過ぎない。中国のウラン確認資源量は約17万1400トンで、世界10位の規模だ。

 一方、中国のトリウム資源は潤沢。確認された工業的埋蔵量は28万トンに達し、インドに次ぐ世界2位。トリウム1トンの核分裂で生じるエネルギーはウラン200トンに匹敵し、石炭約350万トンに相当する。現在のエネルギー消費を前提にすれば、内モンゴル自治区・白雲鄂博鉱区のトリウム資源だけで中国のエネルギー需要を数千年にわたり満たす計算だ。また、採用する高温溶融塩は600~700度でも安定的に液体状態を保つだけに、熱の媒体として理想的という。

 今回の実験炉完成後、研究炉、モデル炉を設置する計画。2035年に100MW(10万kW)級のトリウム溶融塩モデル炉を完工するという目標を掲げた。実証試験後に応用段階に移行する方針という。


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