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  ニュース     2019/07/23 08:44

シリコンバレー「中国新興EV」に異変、撤退準備の観測浮上 無料記事

 飛ぶ鳥を落とす勢いで巨額投資を敢行してきた中国の電気自動車(EV)スタートアップに異変がみられている。先を争って進出した“IT聖地”の米シリコンバレーで事業縮小の動きが目立ってきた。現地で減員、プロジェクトチーム解散などが相次いでいる。盖世汽車が23日付で伝えた。
 シリコンバレーでは、上海蔚来汽車(NIO/NYSE)、拜騰汽車(BYTON)、奇点汽車(智車優行科技)などの中国新興EV勢がそろって研究開発(R&D)センターを設けている。小型トラック・メーカーの重慶小康工業集団(小康)が全額出資するEV生産子会社である金康新能源(SERES)に至っては、研究本部を現地に直接立ち上げた。ただ、これら新興勢を巡っては2018年以降、ネガティブニュースが絶えない。シリコンバレーに置く現地拠点の「調整」に相次ぎ着手。「水面下で撤退準備に入った」との声すら聞かれる情勢だ。
 ここ2年で急速に事業拡大してきたものの、金康新能源は自社製品をいまだに市場投入していないEV専業メーカー。このほど海外メディアに「米国子会社で総従業員の3分の1近い90人減員する」と報じられた。米国で発表した自社初の市販EVとなるSUV「SF5」に関し、生産プロジェクトを当面休止するという。
 「大規模リストラ」は、蔚来汽車と拜騰汽車にもみられた。蔚来に関しては今年5月、海外で70人をリストラした事実が暴露されている。米サンフランシスコのオフィスもすでに閉鎖。7月には、「拜騰汽車がリストラを始動させた」と伝えられた。シリコンバレーの複数技術チームを解散させる意向とされる。
 一方、スマートモビリティ技術チームの主力をシリコンバレーに置いている奇点汽車についても、18年設立から1年半が経過した現在、具体的な事業進展がない。さらに奇点創業者の沈海寅氏はSNSで、「米実験室が窃盗被害に遭った」とこのほど報告した。多くの自動運転関連技術データが持ち出されたという。事業の根幹を揺るがすほど重大な被害内容だけに、自社のシリコンバレー研究開発拠点が一時的な活動停止に追い込まれる事態も想定されるという。
 奇点汽車のケースは特異ながら、中国新興EV勢の「海外スリム化計画」はいずれも一つのシグナルを暗示している。「グローバル化計画を無秩序に速め過ぎた結果、深刻な資金不足に直面した」という点だ。中国と米国の世界2大EV市場では、EVなど電動車を対象とした購入支援補助金が縮小された政策変化も重なって、新興勢を取り巻く販売環境が悪化。ブランド力や商品競争力に欠けるなか、資金繰りの圧力は増大し続けている。


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