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  ニュース     2020/07/31 18:59

中国企業が「AI農業」熱視線、IT大手も本格参入 無料記事

 中国のIT大手が「AI農業」に照準を定めている。次世代技術の進化につれて、農業の情報技術応用が注目分野として浮上した。高齢化が急速に進む中国の農業では、農産物コストに占める人件費比率が拡大の一途をたどる状況。AIやIoT(モノのインターネット)などの先端技術を活用して、省力化や品質向上を可能にする「スマート農業」のニーズは高まり続けている。21世紀経済報道が7月31日付で伝えた。
 Eコマース大手のピン多多(PDD/NASDAQ)のこのほど、農業経営スペシャリストとAIを対決させる中国初のコンペティションを開催している。中国農業大学と共同企画したこのイベントは、イチゴ栽培の技術を競う内容。世界金賞などを受賞した熟練農業者らがそれぞれオランダ、江蘇省、雲南省、中国農業大学の各AIチームと120日間にわたって熱戦を繰り広げる。
 栽培計画、アルゴリズム、収穫量、品質、栽培効率などの各指標を総合評価した上で、最優秀チームを決定する運び。主催者側には、各チームの異なる栽培モデルを同一尺度で評価するノウハウが求められる。
 この競技会開催は、ピン多多がAI農業の深耕に動き出したシグナルと受け止められた。同社は2018年に「農産品中央情報処理システム」を構築。ビッグデータ技術を活用し、全国農産地の生産・販売情報を追跡調査し、AI農業に必要となる膨大なデータを蓄積してきた。
 その半年後には、同業大手の阿里巴巴集団HD(アリババ・グループ・ホールディング:BABA/NYSE、9988/HK)が「ET農業大脳」を発表。AIソリューションを農業分野に持ち込むと宣言した。さらにその半年後には、インターネットサービス中国最大手の騰訊HD(テンセント・ホールディングス:700/HK)と、EC大手の京東商城(JD/NASDAQ、9618/HK)が独自の「AI農業プロジェクト」を相次ぎ発表している。
 うち騰訊はオランダ公立のヴァーヘニンゲン大学と協力。2年続けて農業AIのコンセプトや性能を競う国際大会を開催した。自律型温室ハウスでの栽培技術を各チームが競っている。
 「科学技術強国」躍進を目指す中国は、AIによるイノベーションを国策的に推進してきた。国務院が17年にまとめた「次世代AI発展計画」で、AI技術とその応用を20年までに世界トップ水準に引き上げるとの目標が示されている。AI中核産業規模を20年に1500億人民元、30年に1兆人民元までに引き上げると明示。うち、AI農業について、「25年に15億7000万人民元規模の市場を形成する」との青写真を描いている。中国テック企業が19年に実行した技術開発投資は4005億人民元。うちAIアルゴリズムの開発分野で9.3%を占めた。
 AI農業は世界的にも注目されている分野だ。国連食糧農業機関(FAO)の予測によれば、世界人口は2050年時点で合計90億人を超える。生活レベルや食文化のボトムアップを背景に、食糧需要は足元比で70%も膨張する見通しだ。一方、世界の農業は、土地資源枯渇や環境破壊など問題に直面している。生産能力の最適化と、農業の持続可能な発展を実現する上で、AIは最適解の一つと目された。


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