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  ニュース     2020/05/28 18:59

中国:「CATL製車載電池」釘射し試験で発火、消費者が自主実験 無料記事

 中国の個人消費者が自主的に実施した「車載バッテリーの釘射し試験」が波紋を呼んでいる。実験の対象に選んだ製品は、車載電池の中国最大手メーカーである寧徳時代新能源科技(CATL:300750/SZ)が製造した三元系リチウムイオン電池の2種。いずれも熱暴走を起こして発火したという。毎日経済新聞が27日付で伝えた。
 釘射し試験は、電池に釘(導電性物質)を挿入することで、内部短絡を意図的に発生させる。その際に保護回路が機能して、電池が発火や破裂しないかを確かめる安全評価試験だ。
 中国最大級のSNS「微博(ウェイボ)」から自動車ブログ管理者の認証を受けるユーザーネーム「小魚リ電」さんは、クラウドファンディングで3000人民元(約4万5200円)あまりを調達。CATL製三元系電池の「8シリーズ」と「5シリーズ」、および試験装置を購入した。今月21日にまず「8シリーズ」を実験したところ、電池は発火し、激しく燃え上がった。
 実験の様子を映した動画を掲載したところ、CATL側もこれに反応。22〜23日にかけて、自社が実施した三元系電池に対する釘射し試験の結果を動画掲載した。動画は2パターンあり、1つ目は釘が断裂。2つ目は発火や破裂がなく、実験成功を示す内容となっている。
 CATLの試験結果に懐疑的な見方を示した「小魚リ電」さんは、24日に「5シリーズ」についても釘射し試験を実施。今度もやはり自然発火を起こす結果を得た。
 CATLの動画内容に対しては、競合会社の比亜迪(BYD:1211/HK)も着目。同社の李雲飛・副総経理は自身のブログをこの日更新し、「内部短絡が起きなければ、その実験は失敗を意味する」と書き込んだ。
 ただ、このライバル社に向けた中傷は、BYDに返り血を浴びせる結果をもたらしている。別の微博ユーザーは、BYDが自社の最新リン酸鉄リチウムイオン電池「刀片電池」で行った3月末の釘射し試験について言及。実験データで示された電圧値でみれば、内部短絡しなかった可能性があると指摘した。
 「小魚リ電」さんが電池の釘射し試験に臨んだきっかけは、曾毓群・CATL董事長の発言にあったという。5月11日の2019年業績説明会で自社電池に言及し、「三元系、リン酸鉄系ともに釘射し試験を通過した。電池セル、モジュール、システムの各レベルで業界トップクラスの安全性を確認した」とアピールしている。
 ある電池専門家によると、CATLが実験に使った電池はテスト用に生産した製品。「小魚リ電」さんが使用した電池は、市販製品だったとされる。
 三元系電池について、CATLは足元で「8シリーズ」と「5シリーズ」を展開中。うち8シリーズは最新電池製品として、19年3月に量産開始した。蔚来汽車の「ES6」、東風啓辰の「D60」など電動車10モデルに搭載されている。足元で車両搭載されている同社製三元系電池のうち、8シリーズで全体の20%を占めるという。


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