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  ニュース     2022/03/04 18:00

ルーブル安で為替損失懸念、長城と吉利が同業アンダーパフォーム 無料記事

 【亜州ビジネス編集部】ロシアによるウクライナ侵攻を受けてロシア通貨のルーブルが急落する中、同国で事業展開する中国企業にもたらす影響が懸念されている。自動車業界では、長城汽車(2333/HK)や吉利汽車(175/HK)がロシア市場の開拓に力を入れてきた経緯があり、事業への直接的な影響だけでなく、ルーブル安による為替差損計上への懸念が高まる状況だ。香港マーケットでの両社株価は足元で、同業他社を大幅にアンダーパフォームする展開となっている。
 ロシアの自動車市場で一定のシェアを握る中国メーカーは、長城汽車、吉利汽車、奇瑞汽車など。うち長城汽車は、ロシア市場における中国ブランドの販売トップだ。中国メディアによると、長城汽車のロシアでの新車販売は2021年に前年比125%増の3万9000台となり、市場シェアは1.2%に拡大した。
 長城汽車は現在、モスクワ南方のトゥーラに工場を構える。今回のウクライナ侵攻による影響について、同社は現時点で生産・販売に影響が出ていないとのコメントを発表。長期的な問題が発生する事態は考えにくいと説明した。ただ、自社のウクライナ向け輸出業務は短期的に影響を受けているという。
 市場関係者の間では、長城汽車、吉利汽車ともにロシアでの販売台数がグループ全体に占める比率が小さいことから、実際の事業への影響は限定的とみる向きが多い。ただ招商証券などは、ルーブル安が一時的に多額の為替損失をもたらすと指摘した。例えば長城汽車は、2021年6月末時点で保有する銀行預金のうち、ルーブルが人民元、米ドルに次ぐ第3の通貨となっている。預金残高は3億3180万人民元(約60億円)相当だ。
 また、吉利汽車に関しては、2014年のクリミア併合をきっかけとしたルーブル急落時に、業績が悪化した経緯がある。ルーブル安による為替差損の計上や輸出の低迷を受け、同年12月期の本決算は前年比46%減益となった。
 ウクライナ情勢による業績への影響が懸念される中、香港マーケットでは長城汽車と吉利汽車の株価が足元で大きく下落。ロシアによるウクライナ侵攻が報じられた2月24日から昨日(3月3日)までの累計下落率は、長城汽車が24.12%、吉利汽車が15.83%に達した。これに対して、同業の東風汽車集団(489/HK)は3.86%安、比亜迪(BYD:1211/HK)は4.52%安、広州汽車集団(2238/HK)は5.09%安といずれも1ケタ台の下げにとどまっている。


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