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  ニュース     2020/05/29 18:59

中国:5G基地局向けLFP電池の調達急拡大、鉛蓄電池と代替進む 無料記事

 国策「新インフラ戦略」の追い風に乗って第5世代(5G)移動通信設備の設置が加速するなか、5G基地局市場向けリン酸リチウムイオン(LFP)電池の需要が急拡大期を迎えている。製造コストの低下を通じ、「安全」「高性能」「長寿命」のメリットが顕在化した。鉛蓄電池からの置き換えが急速に進む流れにある。21世紀経済報道が5月29日付で伝えた。
 通信キャリア最大手の中国移動(チャイナ・モバイル:941/HK)はこのほど、世界最大規模となった5G通信設備の第2弾調達入札を終えている。無線ネットワーク主要設備と、単独運用が可能なスタンドアロン(SA)型コアネットワーク(EPC)を調達。中国国内すべての地級以上都市に向けた5G商用化サービスを年内に開始する計画だ。
 うち、3月に公示した通信用LFP電池入札については、出力換算で合計6億1020万アンペアの調達分を8社が落札している。電池調達総額は13億5900万人民元(約205億円)と試算された。年内の5G基地局建設需要を満たす。
 これまで中国移動が整備した5G基地局は、新型コロナウイルス対策重点地域に緊急配備した286基を含め、14万基までに積み上がった。コロナ感染が抑え込まれる中で、すでに5Gインフラ整備を全国で再開。2020年末までに5G基地局の累計整備数を30万基とする目標について、繰り上げ達成を目指している。
 通信向けリチウムイオン電池調達の動きは、中国移動に限らず、中国通信業界全体でみられる流れだ。中国鉄塔(チャイナ・タワー:788/HK)は3月11日、LFP電池モジュール製品を2ギガワット時分調達すると発表した。電源容量不足やピーク時に備えた電力備蓄向けに用いる。今年に入り中国鉄塔が公示したLFP電池の入札募集案件は38件に達した。調達額は15億人民元を超えたとみられる。
 中国鉄塔は早くも18年に、鉛蓄電池の調達停止を発表。今後新たに調達・更新する電池については、中古車載電池の二次利用や、LFP電池に置き換える方針だ。
 一方、5G基地局を共同整備・運用する中国電信(728/HK)と中国聯通(762/HK)も今年に入り、最低でも25万カ所分の5G基地局用設備を購入すると宣言。今年9月にすべての工事計画を終えると予告した。これに伴うリチウムイオン電池調達規模は11億人民元を上回る見通しという。
 大量電力を消費する5G基地局は、備蓄電源を利用した通信ピークシフトによる電力コストカットが本流となっていくだろう。この点でみても、LFP電池は鉛蓄電池より優勢だ。東方証券のリポートによると、蓄電用LFPの市場価格は足元で0.68人民元/Whまで下落。ピークシフトの効果を考慮しなくても、5G基地局向けの製品ライフサイクルコストは、すでに鉛蓄電池を大きく下回った。


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