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  ニュース     2020/03/06 18:59

中国:威馬汽車が春節ボーナス取り消し、「目標未達」理由 無料記事

 中国の電気自動車(EV)スタートアップ企業の威馬汽車技術有限公司(Weltmeister)は4日、2020年春節ボーナス(年終奨金)の支給見送りを社員に正式通知した。「重要業績評価指標(KPI)未達」を理由に挙げている。しかしながら従業員からは「KPI内容を事前に知らせされていない」といった声が上がるなど、会社説明に納得がいかないようだ。未来汽車日報などが4日付で伝えた。

 威馬の関係者によると、春節ボーナスは本来、給料3.5〜3.7カ月分に設定され、年間賃金支給額の3割程度に相当する。さらに雇用契約に示された「年度末月に給与2カ月分を支給する(13薪)」の取り決め内容を加味すれば、本来であれば春節に合わせて月給4.5カ月分のボーナスが支給されるはずだった。ただ、今年は春節ボーナス支給が取り消された上に、「13薪」制度に基づく給与2倍支給月も6月に延期されたという。

 威馬はメディア取材に応じ、「春節ボーナス見送りは経営目標未達が理由」と回答。販売実績に限らず、その他経営指標の達成状況も考慮したと釈明した。「13薪」の遅配については、「新型コロナウイルス流行が影響している」と指摘しつつ、「毎月の給与は遅滞なく支払う」と補足説明している。

 この会社側の決定は、従業員の意欲を大きく削いだ。日頃午後9時まで残業していたある役職クラスの社員は、定時出勤・退勤に切り替えたという。別の社員は、「転職先を探す動きが周囲に出てきた。新型コロナ感染が収まる頃に離職の波が起きるだろう」と語っている。

 威馬の従業員数は足元で約3000人。威馬製EVの2019年販売は、車両保険加入ベースで1万6876台と、新興EV勢では蔚来汽車(2万749台)に続いて2番目に多かった。

 個人消費者のEV購入ハードル引き下げを目的として、威馬は今年1月中旬にネット直販プランを導入。手付金9万4900人民元(約145万円)で、補助金差し引き後18万9900万人民元の「EX6 Plus 400」を購入できる販促キャンペーンを始動した。手付金納入意向を示した消費者は、2月20日時点で1000人を超えたという。

 新興EV勢にとって、20年はターニングポイントになる見通し。充分な経営資金を確保できていないプレーヤーは淘汰戦にさらされるリスクが存在する。これまで威馬は累計230億人民元(約3520億円)を調達したが、「シリーズD」の投資ラウンド計画について現時点で目立った進展はない。

 威馬は、吉利汽車控股集団の海外事業を統括する部門の副総裁などを務めた瀋暉氏が16年に創業。上海市青浦区の崧沢大道333号国家会展中心C棟5階に本部などを置く。18年9月末、初の量産モデルとなる電動SUV「EX5」の出荷を始めた。浙江省温州市の完成車工場で年10万台の生産体制を築いている。「EX5 Pro」や6人乗りスマートSUV「EX6」の新モデルを合わせ、18年出荷は3844台(EX5)。19年は9万台へと一気に引き上げる計画を立てていた。


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