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  ニュース     2020/12/29 19:00

中国:EVに冬季劣化の悪夢、北方消費者は「三元系」優先すべき 無料記事

 売れ行きに弾みがついているものの、電気自動車(EV)は冬季の航続距離減少という問題を抱えたままだ。中古EVだけでなく、新車でも冬季の航続距離減少は気がかりな要因。特に黄河以北の中国北方エリアでは、“冬の悪夢”のように深刻な悩みとなっている。専門家の報告内容として、21世紀経済報道が29日付で伝えた。
 季節的な電池性能劣化は、主に温度変化と運動摩擦によるもの。温度低下による電子の活動停滞が出力減や蓄電容量減を招く。冬季はまた、大気の密度が高く、自動車走行時の空気摩擦が増大。潤滑剤の摩擦係数も高まり、走行可能な距離を減少させる。このほかエアコンを使用した場合、航続距離が大きく短縮されるのが難点だ。
 中国北方エリアのEVユーザーは、実際の走行可能距離について、NEDC(新欧州ドライビングサイクル)モード航続距離の最大6割程度と認識している例が多い。また、充電が便利で低気温にならない自宅の室内に置くことが理想だ。
 比亜迪(BYD:1211/HK)EVの「漢」を11月に北京市で購入したばかりの楊さんによると、NEDCモード航続距離が550キロメートル(km)と表示されているにもかかわらず、実際は350km走行できるのみという。テスラ「Model 3」を購入した北京市在住の肖さんも、「夏季は一度充電すれば1週間の通勤電力がまかなえるものの、冬場は1週間に2回以上を充電する必要がある」と語った。残存航続距離が前夜の200kmから朝方の170kmにしていたと指摘。室外駐車による気温低下で短縮化されたと不満を述べている。
 電池構造の影響も受けている。BYDは自社開発でリン酸鉄系(LFP)の「刀片電池(ブレード・バッテリー)」を新規採用し、テスラは寧徳時代新能源科技(CATL:300750/SZ)製のリン酸鉄リチウムイオン電池(LiFe電池)を新たに搭載した。販売の伸びが目立つ上汽通用五菱(米ゼネラルモーターズ、上海汽車集団:600104/SH、広西汽車集団の3社合弁企業)の「五菱Mini EV」もまた、コバルトフリーのLiFe電池を採用している。ただ、これらは低温に弱いのが弱点だ。
 航続距離が短くても、希望小売価格3万5800人民元(約56万8000円)の「五菱Mini EV」なら、消費者は多少の不便を我慢するかも知れない。半面、20万人民元を超える高額EV製品なら、消費者は不満を募らせるだろう。北方で暮らす消費者が中型車以上を購入する場合、ニッケル、マンガン、コバルトを用いた「三元系」のリチウムイオン動力電池を搭載したEV製品を選択するのが賢明との指摘もみられた。


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