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  ニュース     2020/05/13 18:59

中国:「オンライン診療」大脚光、慢性疾患など医療費削減 無料記事

 新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、中国でも「オンライン診療」を積極的に活用する機運が一段と高まっている。継続的な医療・投薬を必要とする慢性疾患の患者を念頭に、利用浸透を図るべきとの声が官民の間で強まってきた。世界最多となる約3億人の生活習慣病患者を擁する中国では、医療支出に占めるこれら患者の医療保険負担はかなり大きい。それだけに、オンライン診療の普及拡大は、医療費削減につながると期待されている。21世紀経済報道が13日付で伝えた。
 国家衛生健康委員会はこのほど、「オンライン診療サービスをさらに発展、規範化するための通知」を公表。オンライン診療の健全発展を促すスタンスを改めて示した。業界関係者は同政策文書の発表について、「慢性疾患や有病率の高い疾患を対象にオンラインの再診を奨励する意図がある」と解説した。
 国家医療保障局と国家衛生健康委員会は3月、「新型コロナ感染対策期間の『インターネット+』医療保険サービス推進に関する指導意見」を公布。一般的な病気や生活習慣病に限定した上で、一定条件を満たしたネット医療プラットフォームによる再診サービスを公的保険診療の対象に組み入れた。ある医療従事者は、生活習慣病治療が国家戦略に格上げされた点を指摘。「オンライン診療の保険適用だけでなく、医薬品の集中調達制度導入は、いずれも国が慢性疾患治療を重視していることの表れ」と補足説明した。
 中国は2018年以降、オンライン診療に関する政策を矢継ぎ早に公布。これに伴って、各地方政府がオンライン診療サービスの監督管理プラットフォーム整備を加速している。
 政策を追い風に、多数のネット医療企業は慢性疾患領域にサービス対象を絞った。うち、医療ソリューション商社の医聯(Medlinker)は、オンライン診療に人工知能(AI)や医療ビッグデータを融合。慢性疾患患者に専門的な長期安定サービスを提供する体制を整えた。足元で全国80万人超の医師がサイト登録。肝臓疾患、糖尿病、HIV、ガンなど12分野をカバーした。オンライン診療サービスのほか、電子処方や医薬品の配達を手掛けている。
 このほかオンライン診療サービス市場では、騰訊HD(テンセント・ホールディングス:700/HK)が出資する微医集団(We Doctor)、阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング:BABA/NYSE)傘下の阿里健康信息技術(241/HK)、医療サービスアプリ「平安好医生」運営の平安健康医療科技(1833/HK)など新興勢がしのぎを削っている。
 中国疾病予防・制御センターが19年にまとめた調査報告によれば、中国の60歳以上高齢者のうち、75.8%が何らかの慢性疾患を抱えている。1人で複数の慢性疾患を持つ人も多い。国家衛生健康委員会の再診統計によると、中国の慢性疾患患者は足元で合計3億人に接近して圧倒的な世界最多。しかも年間1000万人のペースで増え続けている。2019年の慢性疾患罹患率は23%。死因別の死亡割合は、慢性疾患で86%を占めた。中国の慢性疾患治療支出は、20年に5兆5000億人民元(約83兆2000億円)までに膨張すると予測されている。


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